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はじめに 糸とボビンについて

幼いころの写真を見ると、手にしたカバン、
かぶっている帽子、そして着ている服に至るまで
わたしが身に着けていたものの多くは
母や祖母の手によって作られた「1点もの」の作品でした。
でも小学生になり、さまざまな友人と交流するようになると
次第にみんながいつも話題にするような
流行の既製品のほうが魅力的に思えるようになって
いつからか、母の作ったものはわたしのまわりから減っていきました。

それから十数年の時が経ち、育った土地を離れたわたしは
なんでも揃う便利な都会で、たくさんの既製品に囲まれて毎日を過ごしました。
そのころ感じていたのは「欲しいものはすぐに手に入るのに、なぜか
自分の内側が、少しずつ乾いていく気がする」という思いでした。

便利さとひきかえに失ったもの。

それは、たとえば、誰かが誰かを思いながら、
生地を選び、針を縫いすすめるその時間の中で
ゆっくりと刻まれていった、いくつもの小さな物語だったのかもしれません。
そうやって大切につくられたものには、あたたかな記憶が刻み込まれ
品物を手にした別の誰かの心の奥に
ぬくもりやうるおいを、そっと届けてくれるような気がします。

こうして「糸とボビン」というお店のようなものを始めようと思ったのは
ひとつひとつ手づくりした暮らしの品々を届けることで
小さなぬくもりの欠片を少しでも思い出してもらえたら、
という気持ちがあったからです。

大量生産された流行のものを「買っては捨て、買っては捨てる」
という暮らし方はもう終わりにして、
大切に思えるものを、ひとつずつ身の回りに増やしてみませんか?


いまはまだ、わからないことだらけで
暗闇のなかを手探りで進んでいるような状態ですが
このお店と一緒に、ゆっくりと歩いていけたらと思っています。

さいごに、
材料の仕入れから製作・販売まで、すべてひとりで行っているため
ご注文いただいたお品の納期までお待たせしてしまうなど、
ご不便をおかけする場合もございますが
どうかご理解いただけましたら幸いです。
                     


愛しいものが増えたら、日常をもっと好きになる。
愛しいものが増えたら、自分をもっと好きになる。
歩くような速度で、日々を生きていきましょう。


                                 2012年 早春